かわむら こども クリニック NEWS  平成23年6月号


同時接種をすすめましょう

 ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンと同時接種が再開され2ヶ月が経ちますが、なかなか同時接種に対する心配が消えないようで、同時接種を希望するお子さんが増えてきません。接種見合わせを振り返って事実の確認と同時接種の安全性について考えてみましょう。

 一部の患者さんには、Mail NewsやBlogで紹介してありますが、接種見合わせの理由は次のような経過です。3月4日突然厚労省から、4例の死亡例の報告を受けて“小児用肺炎球菌ワクチン及びヒブワクチンを含む同時接種後の死亡報告と接種の一時的見合わせについて”が出されました。いつものように、我々に伝えられる前にマスコミに流されたものでした。後日談ですが、見合わせに関して専門家の意見は求めなかったという、呆れたものでした。

 ワクチン後の死亡が7例になり、3月8日厚生労働省で“ワクチン予防接種後副反応検討会”が開催されました。様々な意見が出ましたが、ワクチンと同時接種に関係ないと判断するための情報が少ないということで、接種の見合わせが継続となりました。最終的に3月24日に再度検討会が開催され、以下の結論により4月1日から再開されました。

 1.報告された7例の症例評価について
 現段階の情報において、いずれもワクチン接種との直接的な明確な因果関係は認められないと考えられる。
 2.諸外国の状況について
 諸外国で報告されてい る状況と大きな違いは見られず、国内でのワクチン接種の安全性に特段 の問題があるとは考えにくい。
 3.同時接種について
 同時接種における副反応の発現率は、単独接種に比べて高い傾向があるとする報告もあるが、重篤な副反応の増加は認められておらず、特に安全性上の懸念は認められない。

 未だに同時接種に対する意識がもとに戻らない原因には、マスコミの報道の仕方も大きく関係しています。視聴者の不安を煽るような表現、例えば“髄膜炎ワクチンによる死亡”、“同時接種による死亡”とニュースや新聞の見出しになれば、因果関係が無いにも関わらず、死亡原因はワクチンや同時接種と思ってしまいます。こんな形で埋め込まれた意識が、不安が長く続く原因になってしまったようです。Blogには掲載してありますが、接種見合わせ決定後無料アンケート作成サイトを利用して「ヒブワクチン・小児用肺炎球菌ワクチンと同時接種に関してのアンケート」を行ないました。回答総数100件での結果は、次の通りです。

 ・死亡原因推測(複数選択)
 :偶発的な病気・事故73%,同時接種56%,ワクチン自体37%,その他24%
 ・死亡原因推測(単数選択)
 :偶発的な病気・事故42%,同時接種22%,わからない22%,ワクチン自体13%
 ・髄膜炎ワクチン予定者で安全と判断された後の接種
 :様子みて57%,すぐに35%,しない2%
 ・安全と判断された後の同時接種
 :しない46%,様子みて38%,すぐに2%
 ・髄膜炎関連ワクチン以外で、今後のワクチン接種は
 :単独接種で49%,わからない28%,同時接種で18%
 ・ ワクチンの情報はどこから
 :インターネット52%,医師40%
 見合わせ直後ですから止むを得ないにしても、やはり同時接種の意識が後退していることが読み取れます。

 もう一度書きますが、“髄膜炎関連ワクチン並びに同時接種が、死亡との原因とは考えられない。”との結論です。また、2011年1月に日本小児科学会から「予防接種の同時接種に対する考え方」が示され. 複数のワクチンを同時に接種して,それぞれのワクチンに対する有効性について。お互いのワクチンによる干渉はない、複数のワクチン(生ワクチンを含む)を同時に接種して、それぞれのワクチンの有害事象,副反応の頻度が上がることはない。同時接種において接種できるワクチンの本数に原則制限はない。と記載されています。また、同時接種の利点として、各ワクチンの接種率が向上する。子どもたちがワクチンで予防される疾患から早期に守られる。保護者の経済的,時間的負担が軽減する。医療者の時間的負担が軽減する。と示されています。

 接種遅れが原因の細菌性髄膜炎への罹患も既に問題となっています。同時接種のメリットを理解して、以前のように積極的にすすめていきましょう。


アンケート協力のお願い

 髄膜炎関連ワクチン並びに同時接種再開後の意識調査を行なっています。再開後2ヶ月を経過して、保護者の意識がどのように変わったかを知ることは、ワクチン接種をすすめていく上で重要な要素です。

 髄膜炎関連ワクチンと同時接種のアンケート(第2弾)

 よろしく、お願いします。


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