かわむら こども クリニック NEWS  平成26年2月号


インフルエンザ雑感2014

 インフルエンザの季節がやってきました。この季節になると検査検査で。気が重くなります。今回は、愚痴ともつかない院長の話から、インフルエンザにおける問題点を考えてみましょう。

 今年はインフルエンザが大流行の様相を呈しています。AとB型が混合して流行しているだけでなく、AH3(香港)とAH1pdm09(2009新型)も同時に流行しているのが特徴です。流行当初はAH3が多かったのですが、今年に入ってからはAH1pdm09、B、AH3の順になっています。

 インフルエンザの流行の尺度に、注意報・警報があることは、ニュースでも流れるので知っていると思います。まるで天気予報の大雨洪水警報などと同じですが、どのような基準で出されるのでしょう。この基準は感染症動向調査が基準になっています。小児科だけでなく内科などには定点と呼ばれる医療機関があり、毎週感染症毎の患者数を報告しています。その報告数を平均し、1週間あたりの患者数が一定以上になると発令されるしくみです。インフルエンザでは1週間で10人を越えたら注意報、30人を越えたら警報となるのです。注意報は4週間以内に大きな流行発生の可能性、警報は大きな流行の発生を示しています。詳しくはブログの「感染症動向調査」を参考にしてください。

 仙台の流行は1月中旬から始まり、インフルエンザ情報をMail News、Facebookで提供しています。1月末に仙台市では注意報が発令されたあと、クリニック周囲でも患者さんが増加しています。ちなみに、ある幼稚園では1月中旬からほぼ全クラスでAとB型が混合流行し、ほぼ全クラスで複数回の学級閉鎖が続いています。なぜ特定の施設で流行が収束しないのか不思議ですが、いくつかの要因が考えられます。これはあくまでも推測であり、対策・対応を非難するものではないことを付け加えておきます。

 理由として、出席停止と学級閉鎖の期間が関係しているかもしれません。まず出席停止について考えてみましょう。学校感染症の出席停止期間は、学校保健安全法施行規則に規定されています。インフルエンザの場合、従来は「解熱した後2日を経過するまで」の規定でした。しかしながら抗ウイルス薬の効果で1〜2日で解熱する例や2峰性発熱と呼ばれ解熱後1〜2日後に再び発熱する例もあり、治ったようにみえてもウイルスの排泄が続くことが問題となりました。という理由で、平成24年4月から「発症した後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまで」と施行規則が改訂されました。ところが誤解されているのが、「発症した後」の解釈です。「発症した後」は、発症(一般に発熱)翌日から数えることになります(2ページの図を参照)。発熱当日からでは、規定より1日短くなってしまいます。当日からであれば6日が出席停止です。

 続いて、学級閉鎖を考えてみましょう。学級閉鎖に関しては出席停止と異なり、法的な基準はありません。クラスの2割以上が欠席した場合に、校医の意見を参考に校長が決定します。幼稚園でも同様の基準に準じています。さらなる問題は、学級閉鎖の期間です。インフルエンザの潜伏期は1〜3日なので、2〜3日の学級閉鎖ではほとんど意味がありません。閉鎖は、週末をはさみ5日程度が理想的とされています。しかしながら、法的拘束力がないことから、授業時間数の関係や家族の要望との兼ね合いで、短縮授業や短期閉鎖で済ませることもあります。ちなみに保育園では閉鎖という状況は現実的に不可能なのはいうまでもありません。

 さて出席停止と学級閉鎖で、インフルエンザの流行が止められるのでしょうか。以前も紹介しましたが、「新型インフルエンザ流行時の研究」を想い出してください。この研究は小児科開業医18施設、医師・スタッフ合わせて138人について6ヶ月間に渡る新型インフルエンザ感染の研究です。難しい話はさておき、期間中に約半数の感染が証明されたが、38°Cを超えた例は無く、不顕性感染(症状が無い例)が20%でした。これを基に考えてみると、インフルエンザが流行している集団には、症状が軽くても感染源になる人が存在していることになります。外来でよく言うのですが、「本当に感染の状況を把握するには、クラス全員を検査するしかない」と。しかし、これがどれだけ非現実的なことは、皆さんもよく分るでしょう。だからといって感染対策をおろそかにしたり、学級閉鎖を否定している訳ではありません。

 インフルエンザは怖い病気ですが、多くは一刻を争う病気ではありません。テレビのコマーシャルの「熱が出たらすぐ病院へ」という言葉に惑わされず、“熱が出たらすぐ検査”という意識も捨てましょう。迅速検査が陽性となるのは発熱(38℃)後6〜10時間と理解してください。検査や治療に対する考え方は、「改めてインフルエンザを考える」(CLINIC NEWS2013年3月号)を参考にしてください。


 最後に、従来から言われている手洗い・マスク等による予防策を励行し、出席停止の意味を理解し期間をしっかり守ってください。

インフルエンザにおける出席停止期間

クリニック NEWS コーナーに戻る