かわむら こども クリニック NEWS  平成17年 3月号


インフルエンザ2005

 昨年、例年より早い時期にインフルエンザが診断され、早い流行が危惧されましたが流行には至りませんでした。むしろ、今シーズンの流行は遅く、例年と比べ3週間程度のずれがあります。2月下旬から次第に増加し、現在ではインフルエンザ警報が出そうな勢いです。
  流行の時期だけでなく、型別の流行にも例年と異なるところがあります。普通12月下旬頃からA型の流行が始まり、1月中〜2月初旬がピークになります。B型はA型のピークから遅れて流行が始まり、時にはピークも持たずだらだらと続く場合もあります。今年はA型の流行のピークがずれただけでなく、A型とB型が混合して流行してきました。むしろA型の流行の規模はさほど大きくなく、B型が優位になってきています。1月の患者さんの数は非常に少なく、開業以来もっとも少ない年でした。
  また、あくまでも推測の域を出ていませんが、抗インフルエンザ薬(タミフル)がB型で効きが悪いような印象です。抗インフルエンザ薬を投与しても、熱が下がらないばかりか咳などの症状にほとんど効果がない場合もあります。実際、あちこちでこの話題が出ますが、その理由についてはっきりしていません。原因については、今後の検討が待たれるところです。
  毎年インフルエンザの話題がでますが、今年はインフルエンザにおける医師の役割を考えてみましょう。インフルエンザが流行すると急患センターが、多く人でごった返します。その多くの人は、診断を求に来るのです。その診断の根拠が検査であるという誤解から、検査を求めるのだと思います。インフルエンザに限らず、検査は基本的には補助的なものです。医師が病歴を聞き、経過や診察によって病気を診断します。その病気の診断を裏付けるために、必要な場合には検査を行います。インフルエンザの場合を考えてみましょう。インフルエンザは、急に高熱がでて倦怠感、頭痛、咽頭痛や節々の痛みなどの全身症状と咳や鼻水などの呼吸器症状がほぼ同時に現れるのが典型的です。大人では特徴的な症状を来すので診断が容易ですが、子どもでは典型的ではないことがあります。また、次に重要なのは周囲での流行状況です。保育園、幼稚園や学校で流行している、親御さんが1〜2日前に高熱が出たなどが参考になります。診察によって他の発熱疾患を除外し、インフルエンザの可能性を推測します。インフルエンザの場合は高熱にもかかわらず、のどの赤みが少ないことがポイントになります。そしてインフルエンザの可能性が高いにもかかわらず、判断が難しい場合は検査ということになるのです。昨年も話しましたが、検査にも問題があります。検査が陽性になるためには、ある程度の時間(6〜8時間)が必要です。当院では症状が典型的で、周囲に流行があれば、検査をしないでもインフルエンザと診断することもあります。しかし、検査が必要と思われる場合や希望する場合でも、発熱後時間が経過していない場合は、かぜ薬と解熱剤を用い(抗生物資は使用しません:インフルエンザに効果はありません)、半日程度様子をみます。そして経過を見極めて、必要なら検査をして診断するのです。中には、次の日には全く症状が無くインフルエンザの可能性が否定されることも珍しくはありません。このような方針の目的は、不必要な検査による苦痛避けるとともに、不必要な抗インフルエンザ薬の投与を避けることが目的です。
  検査をして陰性だけれども抗インフルエンザ薬を処方されたということを時々耳にします。検査には偽陰性もあることも確かです。痛い検査をして陰性にもかかわらず薬を投与するのであれば、最初から検査しないで薬を投与するのが本来の医師の仕事だと思っています。微熱で検査をしたら陽性なので抗インフルエンザ薬を処方されたというのもあります。しかし、どうでしょう。インフルエンザにも、軽症重症があります。症状が軽いのに、わざわざ病名を付けて、治療する意味や必要があるのでしょうか。検査が無い時代であれば、カゼとして済ませられたのかもしれません。このようなことは、「インフルエンザでは早く検査をして早く治療しなければならない」ということが、独り歩きしているためです。状況によっては、検査や薬の処方もしないこともあるのです。もう一つ家族で流行した時に、家族の何人もが検査をされることがあります。病院によっては、次々かかった場合全員が検査されることがあります。一人が確定診断されていれば、家族の中で流行はインフルエンザに決まっています。このような場合は、検査をせずに治療を始めることがほとんどです。何も痛い思いをするのは一人でいいでしょう。以前検査したお子さんで、綿棒見ただけで恐怖におののく、インフルエンザの検査はそんな検査なのです。
  インフルエンザを通して、もう一度医師の仕事というものを考えてみてください。医師は単なる臨床検査技師(技師さんごめんなさい)ではありません。我々医師は、様々なことまで考えて判断していることも覚えておいてください。


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