かわむら こども クリニック NEWS  平成16年 2月号


インフルエンザ2004

  先月、宮城県でもインフルエンザ警報が出ました。院長がテレビの取材を受けたので、ご覧になった方も多いかと思います。今回は、インフルエンザの話題について少し触れてみたいと思います。
 以前インフルエンザの記事で、検査の話をしました。迅速検査と呼ばれ、わずか10分程度でインフルエンザの診断が可能です。検査のキットの種類にもよりますが、A型とB型の区別も可能です。確かに便利な検査なのですが、知っておきたい注意点もあります。検査はウイルス(抗原)を検出するものなので、ウイルス量が少ないとインフルエンザでも陽性に出ないこともあるのです。実際、「高熱が出たので検査してください。」と言われると、とても困ります。一般的には、発熱後12時間(少なくとも6時間)程度たたないと陽性に出ないと言われています。ですから熱が出た直後に検査しても、陽性にならないことがほとんどです。検査は後鼻腔まで綿棒を挿入して検査します。実際かなり辛い検査です。もちろんインフルエンザの治療は、早いに越したことはありません。そのためには早い診断が必要なのは言うまでもありません。しかし痛い思いをして検査しても陰性であれば、また痛い思いをして検査することになります。インフルエンザを疑っても陰性であれば、抗インフルエンザ薬を投与する訳にはいきません。となると確実な診断のためには、少し待つしかないのです。インフルエンザをあまりに心配し過ぎて、夜間急患センターに行っても、結局陰性ということになるのです。長い間待ってやっと検査、でも陰性。待っている間に具合が悪くなるのでは、何のための受診かわからなくなってします。もちろん症状に注意が必要ですが、発熱のみでは一晩待って受診するのが良いかもしれません。
 抗インフルエンザ薬についても少し考えてみましょう。こどもに用いられる抗インフルエンザ薬は2種類です。A型にのみ有効なアマンタジン(シンメトレル)とA、B型に有効なオセルタミビル(タミフル)があります。しかし、オセルタミビルが動物実験の結果で1才未満に使わないようにとの勧告が出ました。動物実験で通常の投与量の500倍を投与したところ、脳内へ高濃度の薬剤が移行したというものです。しかし、このような高用量が投与されることはないので、実際には問題になることはないと思います。しかし新聞でも取り上げられたため、心配する方も多いかもしれません。A型であればアマンタジンが使えますが、B型では他に薬剤がありません。B型の場合は、親御さんと良く相談の上、使用することの有用性が上回る場合は投与を考えたいと思います。
 今年は従来と比べて、インフルエンザワクチンの効果が低い印象があります。ワクチンは前のシーズンや世界各地の流行状況を考慮して決定されます。しかし、インフルエンザウイルスは小さな変異を起こしやすいウイルスなので、変異の程度によってはワクチンの効果が落ちてしまうこともあります。確実ではありませんが、今回は変異が大きかったとも言われています。
 ここでトリインフルエンザについても少しふれてみましょう。トリインフルエンザは特別な場合を除き、人に感染することはほとんどありません。またトリインフルエンザに感染した人から人への感染はないと考えられていました。しかし、最近人から人への感染が確認されるようになりました。しかし今の状況で、このウイルスが大きな伝染を引き起こす可能性はほとんどありません。でも、どうしてトリインフルエンザが問題になるのでしょうか。トリインフルエンザとヒトインフルエンザが同時に存在して、遺伝子の組み換えなどが起こり新型インフルエンザが生まれる可能性があるのです。人から人へ伝染する新型インフルエンザが流行すれば、世界中に拡大し、誰も免疫を持たないため大きな被害が予想されています。新型インフルエンザの発生を防ぐためにも、トリインフルエンザに対する十分な対応が必要なのです。
 まだまだ、インフルエンザの季節です。今からでは、ワクチンによる予防は期待できません。人込みを避け、うがい手洗いを励行しましょう。マスクも有効な予防法の一つです。またバランスのとれた食事と十分な睡眠をとり、少しでもインフルエンザに負けない体を作りましょう。

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