かわむら こども クリニック NEWS  平成19年 7月号


熱中症に御用心!

 最近は異常気象が続き、今年も酷暑になるとの予想があります。暑い季節になると熱中症という言葉をよく耳にするようになります。赤ちゃんを車の中に放置して亡くなった、水も飲まされない中の運動後に死亡したなど、熱中症による事故の報道は毎年あとを絶ちません。熱中症という状態は、いったいどんな状態なのでしょうか。詳しい説明は後にしますが、高温の環境で水分や血液中の塩分、そして体温の調節機能が働かなくなった状態が熱中症と呼ばれるものです。原因としては高温の環境、湿度が高い環境、水分の摂取量、運動や労働なども関係しています。熱中症は、熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病に分類されています。熱失神とは、高温や直射日光により血管が広がり血圧が下がって、めまいや失神が起きる状態です。熱けいれんは多量の汗をかくことによって体内の塩分が失われることが原因で、血液中の塩分が低下することによって腹部や下肢の筋肉のけいれんなどがおこる状態です。いわゆるこむら返りや足をつるのも熱けいれんの症状のひとつです。水分を補給しないで多量の汗をかいた場合だけでなく、水だけを補給した場合にもおこります。熱失神や熱けいれんで体温の上昇は原則としてありません。さらに進行した状態が熱疲労で、体内の水分と塩分が不足し脱水となり、めまい・頭痛・吐き気・倦怠感等の症状が見られるようになります。体温は少し上昇することもあります。さらに症状が進み体温の調節機能が異常をきたした状態が熱射病で、体温は上昇(39℃以上)し、意識障害・昏睡・全身痙攣が見られ、低血圧などのショック症状も見られ、重症の場合には多臓器不全(様々な臓器の働きが一度に低下すること)により死亡することもあります。毎年50人以上が、熱中症で死亡しているといわれています。また直射日光が原因の場合には、日射病と呼んで区別されていますが、基本的には同じ状態と考えていいでしょう。
 では、どんな状態が危険なのでしょうか。乳幼児では車内や密閉された室内の高温の環境、学童期以降では高温多湿下での激しい運動が原因となります。予防することが大切ですが、まず熱射病は死に至ることもあることを知ることが重要です。
 予防法としては、大きくわけて二つです。まず高温の環境を避けることです。この時期には必ず、親が目を離したために車の中で子供が亡くなったという悲しい報道があります。これが熱射病の典型なのです。直射日光下の車の中は60℃以上にもなるため非常に危険です。短時間であればなどと考えずに、決して車には子供を放置しないようにして下さい。室内でも熱中症が起こることもあります。特に気温だけでなく湿度も大きく関係します。高湿度になると汗の蒸発が減り、体温のコントロールが難しくなります。赤ちゃんや老人は体温に調節機能が弱いため、容易に熱中症になりやすいと言われています。環境に関しては風通しを良くすることはもちろんですが、扇風機やエアコンなどを上手に使いましょう。もちろん冷やし過ぎには十分な注意を払って下さい。
 もう一つの予防法は、十分な水分の補給です。外来で「のどが渇いて欲しがるときは、好きなだけ与えていいのか」と質問されます。わがままで甘い飲み物を欲しがる場合は別ですが、高温の環境下であれば好きなだけ与えて構いません。塩分のアンバランスが症状を引き起こすので多量に汗をかいた場合には塩分を含んだイオン飲料が理想的です。単純な水分の補給は水分であれば何でも構いません。多量のイオン飲料では糖分の摂取が多くなり、肥満や虫歯ヘの影響も心配されます。イオン飲料は健康的という言葉に惑わされずに、漫然と与えないようにしたいものです。水分の補給の目的であれば、糖分を含まないものと考えるといいでしょう。
 暑さが続き、何となく元気がなくなってきたような場合には、要注意です。過ごしやすい環境を工夫して、十分な水分を与えることが大切です。またこの時期夏カゼなどで高熱が続いたり水分が取れない、嘔吐や下痢が続く場合は、熱中症になりやすいので十分注意してください。そして元気がない、水分が取れない、ぐったりしている、尿量が少ないなどの場合には、早めの受診を心がけてください。
 この季節は環境に十分配慮し、水分を多めに与えるようにしましょう。

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