かわむら こども クリニック NEWS  平成9年 4月号


こんなとき どうするの

 “こんなときどうするの”という題どこかで聞いたことがありませんか? 一昨年の小生が担当したテレビの題と同じです。今回は、お母さんからいただいたお手紙をもとに、“こんなときどうするの”と考えてみましょう。
 泉区のS.Yさんからいただいたお手紙です。長いので一部省略して、紹介します。『川村先生や看護婦さん達、いつもお世話になり有り難うございます。(中略)今回私とYが、はきけとげりの風邪をひきましたが、すぐに治りました。その直後Sが急に吐きだし、朝まで13回も吐いてしまいました。(中略)私とYは吐いても3回だけだったのに、Sは吐き気止めの坐薬を入れても効かず、とうとう吐くものが無くなると茶色のものと唾液が出てくる始末。(中略)3日目には元気になり食欲も戻りました。 友達に話したら「茶色いものまで吐いたら自家中毒の症状だよ。それは次の日点滴しないといけなかっただよ」と言われびっくりしました。病院へ行ったほうがいいと言われましたが、Sはどう見ても元気だし、行くべきかどうか悩んでいました。(中略)タクシーを呼んでも病院に行かなければならない至急の場合はどういう時か教えてほしいのです。
・熱が出たらすぐにでも行くべきですか?(熱の子を動かすより、2〜3日様子を見てから病院へ行こうと思っています)
・市販のバッファリンだけでは、治らないのですか?(菌を殺す働きはないのでしょうか)
・吐きだしたら何を目安に、次の日は点滴だと思えばよいのですか?(風邪薬も吐き気止めの坐薬もあると様子を見てみようと思ってしまいます)
・今回みたいに10回以上も吐いて坐薬が効かない場合、夜中でも病院へ行って点滴をするべきですか?(次の日の朝でもいいですよね)
・抗生物質の入った薬というのは、病気の体にどういうふうに効くのか教えて下さい。 先生長々とすみません。でもこんな細かな質問も個人的に聞ける人もいないので、答えられる範囲でお願い致します。でもこんな細かな質問も個人的に聞ける人もいないので、答えられる範囲でお願い致します。これからもSとYをよろしくお願い致します。』
 お手紙をわざわざいただき、有り難うございました。まず第一に、自家中毒だったかどうかです。茶色いものを吐いただけで、自家中毒と診断するわけではありません。翌日には、けろっとしたことを考えると、自家中毒ではなく、単なるウイルス性胃腸炎だったと思います(お母さんも兄弟も同じ症状で改善していることも考えて)。治ってからの点滴は、必要なかった思います。
 順番が少し変わりますが、一つ一つの質問にも答えていきたいと思います。バッファリンですが、これは単なる解熱鎮痛剤で熱や痛みをとるだけで、菌を殺す作用も病気を治す作用もありません。抗生物質は細菌を殺す作用がありますが、咳や熱を直接治療する薬ではありません。もちろん吐くことを止める作用もないわけです。
 次に、今回のことを考えてみましょう。この答えの難しさは、もう治ってしまっていることです。病気の場合、その時とその後の経過が問題なのです。緊急性を有する場合というのは、こどもの苦しみがどのくらいということだけです。こどもの苦痛や状態があまりにも重そうな場合には、緊急に受診する必要があると考えて下さい(なかなか難しいと思うし、お母さんたちのとらえ方でも変わってきます)。後悔先に立たずです。我慢して様子を見て、後で手遅れではすみません。今回の場合、茶色いものを吐いた時点で、受診したほうがよかったかも知れません。でも治ってしまっているのですから、次からはそう考えて下さい。他人の苦しみは、本人でなければわかりません。こどもの立場に立って、考えてあげることが大切です。
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