かわむら こども クリニック NEWS  平成7年5月号


夜間の電話

 たまには、小生の愚痴でも聞いてください。
 先日、夜くつろいでいると、病院の電話のベルがなりました。電話に出ると電話の主は、“こんばんわ、いつもお世話になっています”も言わず、どこの誰かも言いません。挙句の果てに、「風邪をひいているのですが、前の病院でもらった薬を飲んでいいのか」と尋ねられました。もちろん、会話としては、もっと長かったのですが、温厚な小生(?)も思わず、カッとなってしまいました。もちろん、同じような電話は、他にもあります。
 何が問題なのでしょうか?。まず第一は、名前や誰誰の母ですと名乗らないことです。日常の生活の中で、自分を名乗らないで、電話をすることはありません。まして夜間に電話する場合は、誰でも気を遣うはずです。名前も名乗らない電話がかかってきたら、切ってしまうかもしれません。どうして、名乗らないのでしょうか?。病状の相談や薬の疑問などを相談する権利は、誰にでもあります。誰が、電話しても構わないことなのです。その時、名前を知られては、まずい何かが、あるわけではないでしょう。
 次は、電話の目的が伝わってこないことです。電話に出ると長々と話が続き、いったい相談なのか夜間に受診するのか、どちらかわからないことがあります。どうせなら、「これから、診てもらえますか」と、単刀直入に言ってもらったほうが、どれだけすっきりするかわかりません。
 次は、言葉に対する責任です。医療は、単なる電話相談と違い、言葉だけでの解決は困難です。医療の原則は、診察その他による診断があって、初めて方針が定まるのです。診察しなければ、薬が出せないことを考えれば、当然のことです。電話の話に戻ってしまいますが、どんな症状かも言わず、他の病院で貰った薬を、飲んでいいかどうかの判断は、電話だけではできないのです。そんな電話を掛ける人には、はわからないかもしれませんが、医師には大きな責任があるのです。電話だけで、大丈夫とは言えないのです。話がうまく伝わらずに、大丈夫と言って、何か問題が起これば、お互い大変です。電話で相談した方の責任より、大丈夫と言った方の責任が問題とされるのです。
 同じように、回答だけを求める電話も来ます。長い間相談して、責任のことを考えて「心配なら連れてきなさい」と言うと、結構ですと電話を切ってしまうのです。そんな時には当院は、単なる夜間の無料電話相談室となってしまうのです。もちろん、お金がどうのこうのというつもりはありません。しかし、何か困ったからといって、弁護士の家に、夜間無料電話相談する人は、いないはずです。
 ほとんどの人は、もちろん礼儀正しく、電話をしてくれます。この記事を、ちゃんと読んでくれている人は、きっと大丈夫でしょう。電話による相談に対しては、電話再診料を請求できることになっています。普通の相談の場合には、電話再診は請求せず、サービスの一つと考えています。
 冒頭のような、電話が来ると、本当にがっかりしてしまいます。思わず、病院の留守電のスイッチを入れ、居留守を使いたくなってしまいます。それでは、次に電話する人が困ってしまいます。
 電話の掛け方は、一つの常識で、言うまでのことではありません。もう二度とこんなことを書かないで済むようにしたいものです。
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