かわむら こども クリニック NEWS  平成26年7月号


クリニックと患者さんの連携

「この度は、娘を助けてくださり本当に本当にありがとうございました。かわむら先生には感謝してもしきれません。手術にも立ち会ってくださり、ありがとうございました。」。

 突然こんな文章を示しても、皆さんには何のことだかわからないでしょう。テーマも何のことなのか、疑問符ばかりです。
当院の理念が「お母さんの不安・心配の解消」であることを皆さんは知っていますよね。非常に希な病気で重症な赤ちゃんが3つの病院を救急車で転送、お母さんの不安がいかほどか想像もつきません。その不安に対して、理念を基にクリニックとかかりつけの医療ソーシャルワーカー(MSW)とが連携・協力して母親の精神的サポートに当りました。母親とMSWのコメントを加えて物語風に綴ってみました。

 カゼで再診した3ヶ月時。兄弟の診察中スタッフが抱っこしていた時はニコニコ。診察室には入ってきた途端、途切れるような呼吸、顔色も青ざめ、うつろな表情。一目で重症とわかるほどで、酸素飽和度(体の中の酸素割合)も低い。酸素投与で回復したものの、直ちに病院転送の救急車要請。「先生の言葉が全然頭に入ってこなかった。救急車じゃないと間に合わない。と言われて初めて我に返った。」

 看護師を同乗させ病院へ。「意識が無くなるのではないかと不安になり、震えが止まらない。看護師さんの『大丈夫。』という言葉を信じて病院に急ぐ。」
入院手続きをすませた後、レントゲンで横隔膜ヘルニアと診断。再び救急車で専門の病院へ。「なかなか着かない。娘が、だんだん弱くなっていくような気がして早く到着してほしいと願う。」

 理念「お母さんの不安・心配の解消」基にした活動のひとつが入院先への訪問。あまりにも大きな不安に対して、今回は訪問はもちろんのこと更なる手だての必要性を痛感。幸い入院先の病院には、遠方から通院の母親がMSWとして勤務。普段からもコミュニケーションがとれ、直前にも相談とも愚痴ともつかないメールに返信。依頼したMSWからは、「相変わらず、川村先生は患者さん(の親)思いだなぁ。親愛なる、大恩ある川村先生にお願いをされるなんて光栄だ!」とのうれしい返事を頂く。

 事前の対応は整い、翌日の手術に立会うことに。5時間に及ぶ手術、両親の不安・心配は極限に。「娘が手術着に着替え、エレベーターに乗り手術室に入っていく。ずっと手を握る。涙で娘の顔がよく見えない。手術室の扉が閉まると夫と一緒に泣いた。1分1秒が長い。全然時間が過ぎない。何か口にしたが何を食べたか覚えていない。夫と何を話したのかも覚えていない。」

 無事手術が終了、執刀医の説明に同席。居るはずのない院長の顔をみて...。「かわむら先生の顔を見たら、緊張の糸が切れたかのように泣いてしまった。そっけない話し方なのに温かく感じた。嬉しかった。まさか来てくれると思っていなかったので有難いなっと思った。手術に立ち会ったと聞き、こんな熱心な先生いるんだなと思った。」

 器械を付けられている不安の中、MSWが病室を訪問。「まさか、かわむら先生からの紹介だとは思わなかった。こんな配慮してくれるとはビックリした。同じ母親、子ども達がかかりつけだと教えて頂き心強かった。」。MSWの感想は「もちろん、先生の予測(期待?)のとおり、お母さんは初めての大学病院の小児病棟で、同じクリニックのかかりつけの親であり大学病院の職員でもある私に声をかえられて、そして、私を通して先生がお母さんのことを心配していることを知り、さまざまな不安が軽減されたという良い結果をもたらしたと思います。(MSW)」

 退院が決まって喜びの母親からメールが。「この度は、娘を助けてくださり本当に本当にありがとうございました。かわむら先生には感謝してもしきれません。手術にも立ち会ってくださり、ありがとうございました。退院のめどは経ってませんが、経過は順調です。今日、ソーシャルワーカーの方と話しました。かわむら先生より〜と聞いて泣きそうになるのを堪えました。退院したら、先生に会いに行きます。今後も息子と娘が度々お世話になると思います。よろしくお願いします。」

 「不安・心配の解消」に加えて、母親を励ますために2回目の訪問。手術直後と比べて疲労と不安の色も薄れ、笑顔での対応。「昨日はわざわざ病室まで来て下さりありがとうございました。先生の顔を見たら、心が温かくなり泣いてしまいました。つくづく、先生と出会えたことに感謝しています。お陰さまで明日退院することになりました。念のためということで、夜寝るときだけ酸素を付けて、酸素を測る機械を付けることになりました。自宅に帰ることでき、まずは一安心です。本当にありがとうございました。」のメールが届く。

 今回のケースは、開業以来続けてきた「お母さんの不安・心配の解消」の集大成のような気がします。院長だけでなく、スタッフ、かかりつけの患者さんの連携により、重症な児を持った両親の心の支えとなることができました。

 無理なお願いにもかかわらず、率直で感謝あふれるコメント寄せてくれたお母さん。そして、大きな役割を果たしてくれたMSW、本当にありがとうございました。

患者さん面会後にMSWとツーショット

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