かわむら こども クリニック NEWS  平成16年 5月号


今、風疹が危ない

 今回は、風疹について少し考えてみましょう。風疹の流行や問題点について、テレビの取材を受け4月14日に仙台放送のNEWS CENTER SENDAIで放映されたのでご覧になった方も多いと思います。
 2月以降宮城野区の一部で、風疹が流行しています。現在は沈静化の方向に向かっていますが、全国的にも風疹(ふうしん)が流行の兆しをみせています。厚生労働省は4月9日に、妊娠初期の女性が感染すると子どもに重い障害が出る「先天性風疹症候群」が発生する恐れが高くなったとして、女性にワクチン接種を呼びかける異例の通知を出しました。今年に入り患者報告数が最近10年間で最高になり、成人の感染が20%を占め昨年の2倍と急増の傾向を示しています。
 問題を論じる前に、まず風疹という病気を説明しておきましょう。原因は風疹ウイルスで、幼児や学童が多く罹患します。不規則な間隔で局地的に流行しやすく、春から初夏に多く見られます。しかし以前と比べて、季節性はあまりはっきりしなくなりました。飛沫で感染しますが、麻疹や水痘ほど伝染力は強くありません。不顕性感染(かかったのに症状がでない場合)が20〜40%と多いのがひとつの特徴です。症状は大きく分けて、発疹・リンパ節腫脹と発熱です。発疹は、バラ紅色で小さく孤立上で、一見きれいでかゆみがあります。顔面から始まり体、四肢へ広がり3日程度で消失するため、「三日はしか」とも呼ばれています。リンパ腺腫脹は、耳介後部、後頭部などに見られ、比較的大きく、圧痛(押すと痛む)があります。発熱は、約半数にみられ、2〜3日で解熱します。成人がかかった場合はひどくなることが多いようです。その他、結膜充血、咽頭痛、咳嗽などの風邪に類似の症状が見られることがあります。症状が軽いため流行期以外では、診断が難しい場合があります。合併症としては、意識の変化やけいれんを伴う髄膜脳炎(1/5000人)や出血斑や歯茎、鼻等からの出血がみられる血小板減少性紫斑病(1/3000人)があります。最も重要な合併症は、先天性風疹症候群で、妊娠早期の妊婦がかかると小頭症、白内障、心疾患等の奇形の子どもが生まれる可能性が高くなります。この病気にかかると治療法は無く、親子共々大きなハンディを背負うことになります。ここ数年局地的な流行が見られ、年間1例程度の先天性風疹症候群が発症していましたが、今年はこれまでに2例が報告されています。
 このことで問題となるのは、16〜24歳の予防接種率が低いということです。77年から94年まで行われた女子中学生に対する風疹ワクチンの接種率は、義務接種にもかかわらず70%と低くなっています。風疹の既往ある場合は、接種しないケースもありました。しかし、女子中学生への調査で「風疹にかかったことがある」と回答した場合でも、風疹の抗体がなかった生徒が15%もみられました。風疹の診断は前にも述べたように難しい場合も多いため、罹患したと思いこんで接種しない場合が意外に多いのです。発疹がでる病気はさまざまで、伝染性紅斑や溶連菌感染症などが風疹と間違われることもあります。この年齢はちょうど妊娠可能な時期と一致するため、感染により先天性風疹症候群のお子さんが産まれる可能性が出てきます。
 治療は対症療法のみなので、予防が重要です。予防接種は定期接種で、90ケ月まで無料で受けられます。90ヶ月を越えていても罹患がはっきりしない場合、未接種者や予防接種歴が不明な場合は任意接種(有料)となりますが、合併症や先天風疹症候群のことを考えると是非受けるようにしたいものです。もちろん過去に感染していた場合やワクチンを接種した人が2回受けても、特に問題はありません。ただし、風疹ワクチンは生ワクチンなのでウイルスが胎児に感染する可能性があり、妊娠している女性は受けることができません。また、接種後に最低2か月は避妊が必要となります。
 風疹は比較的軽い病気ですが、先天性風疹症候群の様な大きな問題もあるため、親子共々積極的に予防接種を受けるようにしましょう。

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