かわむら こども クリニック NEWS  平成20年 3月号


アタマジラミに御用心

 皆さんは“アタマジラミ”をご存知ですか。え〜シラミ?何て思う人がいるかも知れません。実は最近この“アタマジラミ”、保育園、幼稚園、小学校などで、問題になっているのです。今回は、この“アタマジラミ”ついて考えてみましょう。宮城県でも食と暮らしの安全推進課から1月に「アタマジラミに関する相談件数が増加しています。アタマジラミは,主に12歳以下の児童の頭髪に寄生し,吸血します。感染すると激しい痒みを生じるほか,接触等により容易に伝播し集団的に流行するので注意が必要です。」と注意喚起が出されています。
 アタマジラミが寄生すると、頭を痒がることがほとんど唯一の症状です。アタマジラミは2〜3mmの昆虫で、人の血液を吸って生きています。吸血される時に皮膚に入った蛋白の反応で、痒みが起きてきます。小さい子どもでは掻き壊すことによって、“とびひ”となる場合もあります。成虫は移動のスピードが速いため、見つけることは困難です。成虫(写真1)は見つかりにくいのですが、卵は比較的容易に見つけることが出来ます。洗髪を頻繁に行なっているにも関わらず痒がる場合には“アタマジラミ”を疑い、注意深く観察してみましょう。卵(写真2)は1mmの半分程度の大きさで、灰白色で光沢があり、指でしごいても取れないのが特徴です。フケやヘアーキャスト(卵もどき:フケと脂肪の塊)は、少し力を入れてしごくと取れるのが違いですが、必ずしも区別できるものではありません。
 集団生活の中で、特に頭をくっつけ合ったり、寝具を共有することによって、ヒトからヒトに伝染します。高学年の子どもや大人ではほとんどみられず、比較的年齢が低い子ども達の間で流行します。もうひとつの理由は、洗髪をいやがったり、不十分な洗髪、ドライヤーを使わないことも原因のひとつです。その他、帽子・ヘアブラシ・タオルの共有も広がる原因となり、寝具や添い寝からおとなにも移行します。
 最も基本的な治療法は、専用の梳き櫛(すきぐし:非常に目の細い)を使用して丁寧に取り除き、十分洗髪することです。櫛だけで効果が無い場合には、殺虫剤(スミスリン)による駆除法もあります。シャンプーと粉剤がありますが、治療には健康保険が使用できないため、薬局から購入することになります。使用する場合は、説明に従って取扱いには十分な注意をしてください。殺虫剤の効かないシラミが増えてきているとも言われて、必ずしも十分な効果がでる訳ではありません。成虫も卵も熱に弱く、60℃で5分間で死滅すると言われています。寝具から感染するので、マクラカバー、シーツや下着を60℃のお湯に浸けることも推奨されています。また洗濯物にアイロンをかけることも効果的です。髪の長い子の方が駆除しにくいため、髪を短くすることも効果的です。また、洗髪後にドライヤーで十分に乾かすことも効果があると言われています。しかし、やけどを起すこともあるので乾かすことが目的であり、駆除の目的で行なうことは避けてください。
 日常生活でとくに制限の必要は無く、友達と遊ぶのも構いませんが、頭髪に触れるものの共有は避けましょう。手を介してうつったり、床からはい上がってうつることはありません。
 “アタマジラミ”で重要なことは、不潔にしているから起るという意識を捨てることです。最近はむしろ先進国で問題となり、日常の普通の生活で誰でも感染する可能性があるのです。早期に発見することも重要なので、スキンシップをかねて普段からお子さんの頭にも注意を向けてあげてください。不潔や不衛生という誤解から、差別やいじめの原因となることがあります。誰が原因かを特定することは不可能ですし、集団では多くの子ども達が感染していることがほとんどなので、班員探しをしたりすることは避けなければなりません。この病気(問題)への理解を含め、家族、集団全体で防除するという意識が必要です。


<アタマジラミのお役立ち資料>
 池袋保健所 アタマジラミ http://mekuru.city.toshima.tokyo.jp/hokenjyo/gaityu/ippan-leaf.pdf 
 国立感染症研究所 昆虫医科学部 http://www.nih.go.jp/niid/entomology/ (写真提供)



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