かわむら こども クリニック NEWS  平成10年7月号


乳幼児突然死症候群(SIDS)

 最近話題になっているので、皆さんSIDSという言葉は御存知かと思います。SIDSというのは乳幼児突然死症候群のことです。今回はこの病気(?)について考えてみたいと思います。
 新聞で「乳幼児突然死症候群、うつ伏せ寝、喫煙、ミルクが危険」という記事を見て、どきっとした方も多いと思います。さて乳幼児突然死症候群とはいったいどんな病気なのでしょうか。突然死という言葉が示しているように、元気だった赤ちゃんが大きな前触れもなく突然亡くなってしまうものです。SIDSのはっきりした原因は不明ですが、睡眠中に呼吸が止まり、普通 なら苦しくなって息を吹き返すはずが何らかの異常により、そのまま呼吸することなく死亡してしまうと考えられています。呼吸というのは呼吸中枢でコントロールされていますが、そのコントロールが出来なくなってしまうということです。もちろん突然死には様々な原因があるのですが(心臓病など)、解剖によってもその原因が明らかにならないものがSIDSと呼ばれています。嘔吐したものを気管に詰まらせて亡くなるということがありますが、このような状況の多くはSIDSの可能性があります。また乳幼児という言葉から分かるようにほとんどは1〜2才(国によって定義が異なります)で、ピークは4〜6ヶ月にあり、8割は6ヶ月まで起こります。頻度は国によって異なりますが、日本は欧米に比較して少なく、約2,000人に一人ぐらいの頻度です。仙台市の出生数は年間10,000人ぐらいですから、5人ぐらいが亡くなっている可能性があるわけです。
 先程の新聞記事に戻りますが、原因は明らかではないのですが、危険因子(誘因)というのがいくつかあげられています。仰向け寝よりうつ伏せ寝、母乳栄養より人工栄養、親の非喫煙より喫煙者のこどもに多いということです。また環境の温度が高い(暖めすぎ)のも誘因として考えられています。でもあくまでも誘因であって、何倍もの倍率でSIDSの頻度が高くなるというわけではありません。確かに外国でうつ伏せ寝をやめるキャンペーンを行い、30%程度減少したという事実もあります。しかし考えてみれば、うつ伏せ寝で母乳で育ちお母さんがたばこを吸うからといってSIDSになるものではなく、仰向け寝で母乳で育ち、お母さんがたばこを吸わないからといってSIDSにならないわけでもありません。誘因は原因ではなく、何らかの関係があるだろうということでしかありません。
 もう一つ強調しておきたいのはこれは事故ではなく、病気なのだということです。誘因だからといってミルクをやめるわけにはいきません。深刻に考えてしまうと親の責任という事になってしまう可能性がありますが、責任ではなく病気なのです。このことで問題になるのは事故などとして取り扱われ、こどもを失って悲しむ親にもう一つの大きな問題を背負わせてしまう可能性があるのです。この病気を理解していない(最近は理解されるようになってきましたが)いろいろな人々のため、親御さんたちは過失などという言葉で責められることになってしまうのです。実際につらい体験をした親御さんたち達の立場を守る必要性(精神的ケア)が、強調されています
。  誘因を出来るだけ避ける努力は必要ですが、完全な方法はないということです。頻度は低いものですからむやみに心配の必要はないので、今までと変わらなくていいのです。うつ伏せ寝は避け、本人や周囲の人のためにも禁煙、暖めすぎない、添い寝でお母さんは眠らないなどに気をつけて下さい。もちろん子育てすべてに言えることですが、こどもから目を離さないということは基本です。最後に大切な項目をまとめておきますので参考にして下さい。
  • 病気を正しく理解する
  • 仰向け寝
  • 赤ちゃんを暖めすぎない
  • 妊娠中や赤ちゃんの周囲で煙草を吸わない
  • 母乳保育
  • 目を離さない
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