かわむら こども クリニック NEWS  平成21年 7月号


夏カゼをひくのは誰?!

 「夏カゼはバカがひく」なんてことば聞いたことがありませんか。医学的には証明はできませんが、ちょっと調べてみました。インターネットの慣用句辞典(くろご式)によると、「愚鈍な者は、冬に引いた風邪を夏になってから罹(かか)ったのだと気が付く。馬鹿はそれほど愚鈍であるということ。」、そして誤解から、「一般に、夏風邪を引く者は愚か者であるということ。」ということです。でも医療現場での夏カゼというのは、鼻水や咳などの普通のカゼを夏にひくことではなく、夏の気温・湿度が高い環境を好むウイルス(エンテロウイルス、アデノウイルスなど)によって引き起こされる病気のことを指します。エンテロは「腸」をアデノは「のど」を意味しています。エンテロという言葉が示すように、「夏カゼはおなかにくる」といわれ、下痢などの症状を伴ったり、激しい咳や鼻水などの症状を伴うこともあります。
 夏カゼの代表格は、「ヘルパンギーナ」です。一度ぐらいは名前を聞いたことがあるでしょう。主にエンテロウイルスによっておこります。年齢は4歳以下がほとんどで、1歳台に多くみられます。症状は高熱が持続し、口の中に粘膜疹(水疱、潰瘍)ができ、口の中の痛みが強いのが特徴です。また、「手足口病」も同じ種類のウイルスによっておこり、4歳以下に多く2歳以下で約半数を占めますが、時に学童期に流行することもあります。口の中の水疱と手のひら足の裏を中心とした発疹(水疱)が特徴です。発熱の頻度は多くありませんが、やはり口の中が痛くなることがあります。咳や鼻水などの症状がほとんどみられないのが特徴です。ウイルスに対する治療法はなく、対症療法になります。注意すべきは脱水症で、夏の暑さと痛みによる水分摂取の減少によっておこり、小さい子どもほど陥りやすいことを覚えておきましょう。水分の補給を第一と考え、無理に食べさせずに、味付けを工夫し、飲みやすいものを中心に与えましょう。
 「咽頭結膜熱」も夏に多くみられ、アデノウイルスによっておこる病気の一つです。アデノウイルスは様々な症状を引き起こしますが、発熱・咽頭痛・結膜炎を伴うものが咽頭結膜熱で、プールを介して集団発生することからプール熱ともよばれます。プール後にはしっかりシャワーを浴び、目を洗い、タオルの共用はやめましょう。典型的な症状以外に、下痢や嘔吐を伴ったり、頚部のリンパ節が腫れたりすることもあります。鼻水やひどい咳を伴ったり、時には高熱が1週間程度続くこともあり、結構親御さんを心配させる病気代表です。アデノウイルスも対症療法しかありませんが、高熱が続くため除外するための検査や点滴が必要になるケースもあります。
 夏カゼではありませんが、夏に注意すべき皮膚の病気についても考えてみましょう。「あせも」(汗疹)は、汗をかき過ぎることで皮膚の中に汗が溜まるために起こる病気です。子どもは大人と比べ汗をかきやすいこと、汗を出す能力が不十分なことが原因となります。最初は皮膚と同じ色の盛り上がりで痒みはありませんが、炎症を起こし赤くなったものは痒みが出てきます。汗をかきやすい首の回り、胸や背中などに見られます。暑さを避け汗をかかせないことが一番ですが、実際には不可能です。薬で治るものではありませんが、痒みが強くかき傷がつく場合には軟膏による治療も必要となります。
 「とびひ」(伝染性膿痂疹)も夏に多く見られるものです。虫刺され、湿疹、あせもなどを掻きくずし、黄色ブドウ球菌あるいは連鎖球菌が感染しておこる病気です。黄色ブドウ球菌によるものは、水疱ができるので水疱性膿痂疹とよばれ、乳幼児に多く夏にみられるのが特徴です。掻くことによって、あちこちに飛び火のように広がるため名前が付き、手が届くところに広がるのが一つの特徴です。軽いうちには軟膏で治ることもありますが、多くは抗生物質の内服が必要となります。広がり始めたら、早めの治療を心掛けてください。
 夏だからカゼをひきやすくなる訳ではありませんが、暑さによって体調が悪くなったり、飲み物中心となり栄養のバランスが崩れやすくなります。体調を管理することは、カゼの予防にもつながります。バランスのとれた食事、早寝早起きの生活リズムに気を遣い、しっかり睡眠をとることを心がけましょう。また、汗をかき、汚れがつきやすい季節です。皮膚の清潔のために、汗をこまめにふき取る、しっかり洗い流す、水浴びをするなどのケアとともに、体調管理のためにも上手に扇風機やエアコンを使うことも考慮しましょう。大人に合わせた不適切な使用や冷やし過ぎには十分注意し、子どもに合わせた使い方を考えてください。
 夏カゼにして皮膚病にしても、気になる場合には早めの小児科受診が原則です。今回の話題とは異なりますが、やはり夏に多い食中毒に対する注意が必要なのは言うまでもありません。

クリニック NEWS コーナーに戻る