かわむら こども クリニック NEWS  平成18年 8月号


クリニックでの治療基準

 お子さんの熱が長く続いたり、具合が悪くて、心配した経験があるかもしれません。そんな時医師が治療に関してどんなことを考えているかを知っていれば、少しは気持ちが落ち着くはずです。
 先月号の新聞で診療に対する疑問のメールを頂いたことを紹介しました。内容は、当院で診察を受けた2日後に症状が気になり総合病院を受診し入院となったというものでした。当院での病気や治療に対する考え方を示すために、丁寧にお答えしました。メール(一部削除・変更)を紹介しますので、一緒に考えてみてください。
 「御報告ありがとうございました。今回のことで不安を与えてしまって、申し訳ありません。子どもたちの熱や咳の原因は、ほとんどがカゼです。カゼの経過の中で、気管支炎や場合によっては肺炎を併発します。もちろん大人と違い、進行が急ということが特徴です。
 通常、咳や鼻水などの症状の場合はかぜ薬のみで様子を見ます。ほとんどはウイルスによるので、普通は抗生物質の投与は行ないません(耐性菌が問題となっています)。発熱などの症状が加われば、状況によって抗生物質を処方します。また、効果は服用してすぐ判定できるものではなく、2〜3日は症状に注意して待つことになります。2〜3日熱が続いても全身状態(水分、機嫌、元気など)があまり悪くなければ、抗生剤を変更してもう2日程度様子を見ます。但し、全身状態の悪化や心配な症状があればレントゲンや血液検査を行い、診断と重症度の判定を行ないます。水分摂取が不十分な場合、点滴を行なうこともあります。全身状態が比較的良好でも発熱が5日以上続けば、状況を評価するために原則として検査をします。
 親御さん達にも様々な思いや心配があるので、治療に関しては一定の基準を作らざるを得ません。咳がひどく、高熱(1日だけ)がでたからといって、すぐに採血やレントゲンということにはなりません。検査ばかりしていれば、逆に検査ばかりしているとクレームがつくことになります。もう一つは、お子さんに対する影響です。レントゲンでは被爆ということが問題になります。大人と違って採血は、子どもにとって大きなストレスです。そのようなリスクを考えて、一定の基準を作って対応しているのです。今回の経過は、抗生物質の効果がなく、その後の進行が速かったということになるのでしょう。そこを見抜けなかったことは、反省しています。また連れてくる基準をお話したかと思いますが、十分伝わらなかったのかも知れません。
 現在も重症なお子さんがいて、40℃以上の熱が4〜5日続き、夜も眠れないほど咳き込み、ゼーゼーがひどく、水分も取れず、食べたものを吐いてぐったりし、3日前から毎日点滴(5日間も連続で通院)に通ってきてやっと改善傾向を示しています。今日になって熱が下がり、入院しないで済んだと親御さんも喜んでいます。多くの親御さんは何とか入院しないで済むことを希望しているので、当院ではよほどの重症(特殊な病気)でなければ、なるべく外来治療で完結したいと思っています。
 今回のことは、自分の読みが甘かったためでしょう。毎日来ていたら、対応が変わったかもしれません。親御さんの心配は様々です。心配が強ければ、逆に入院を勧めることもあります(あまり重症でなくても)。ここは、親御さんとのコミュニケーションが関係します。心配な親御さんは、症状が改善しなければ遠慮なく連れてくることが多いようです。「先生の治療で治らないので、何とかしてください」、それが正しい判断だと思います。
 もう一つ、病院の入院も様々な基準があります。開業医にかかっていて改善があまり思わしくなく、親御さんの心配が強ければ、それだけで入院の基準になることもあります。又病院はベッドを持っているため、空床であれば入院の適応基準が少し低くなることもあるようです。他の先生にかかる時にも、今回のことをしっかり覚えておいてください。
 今回のメール、参考にさせてもらいます。このような相談窓口を作っているのもの、当院の医療への姿勢と御理解ください。ありがとうございました。」
 今回の記事で、当院の病気に取り組む姿勢や治療方針について、御理解頂ければと思います。何より大切なことは、コミュニケーションです。遠慮なく、心配を伝えてください。

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