かわむら こども クリニック NEWS  平成16年 6月号


子どもとテレビ

 4月に日本小児科学会から乳幼児のテレビ・ビデオについての提言が出されました。今回は、子どもに対するメディア、特に乳幼児のテレビについて考えてみましょう。
 テレビの悪影響で、すぐ思い浮かぶことは視力への影響でしょう。テレビを見ると目が悪くなると言うことは誰でも思い浮かぶことだと思います。実際に健診では「近くでテレビを見ているが大丈夫か」という相談はありますが、どのくらいの時間テレビを見せていいかと聞かれることはほとんどありません。
 さて、テレビの問題とは、いったい何でしょうか。長時間テレビを見ている子どもたちで、言葉が遅れる、視線合わない、表情が乏しいと訴えて小児科医を受診し、テレビを見せないようにすると症状が改善する例があることが最近報告されるようになりました。
 小児科学会が行った17〜19ヶ月児の調査では、4時間以上テレビを見ている児と8時間以上見ている家庭で、テレビの悪影響が確認されました。4時間上の児では4時間以下の児と比べて、意味のある言葉の遅れが1.4倍も高いことが示されました。また8時間以上の家庭では割合が高く、それに加え4時間以上の児では言葉の遅れが2倍高いことも指摘されています。もう一つはテレビを見ている時の親のかかわり合いの違いも大きな影響があると指摘されています。4時間以上テレビを見ている児に対して親のかかわり合いが少ない場合は言葉の遅れが著明で、2.7倍も高いとされています。
 それでは、テレビは悪影響だけなのでしょうか。決してそうではありません。親子一緒にテレビを見て、歌ったり、笑ったり、質問したり、コミュニケーションの一つの道具です。番組の記憶から、テレビ後もコミュニケーションも生まれます。年長になれば、テレビの話題から会話が生まれ、友人とのコミュニケーションに役立つこともあるでしょう。
先日、テレビの番組で早期教育のことが取り上げられていました。人間の脳はだいたい3歳位 までに完成するので、その間の教育が重要という考えがあります。乳児期からビデオを見せたり、幼児期早期からの英会話など、早期教育が流行しています。この時期に学んだことは一生忘れないなどが、この教育の根拠になっているようです。しかし、現実にはどうでしょう。乳幼児期の海外生活で英語がペラペラでも、日本で暮らすようになり何年もたつと全くしゃべれなくなることは珍しくありません。人間の脳は様々な情報を自然に吸収しながら、成熟していくものと考えられています。一つ覚えると一つ忘れるのが、覚えることの仕組みです。未熟な脳に無理矢理詰め込み過ぎるとかえって歪みを引き起こす可能性があり、乳児期の教育は害はあっても利は無いと結論付けられていました。
 一般に言葉は、人とのかかわりあいの中で覚えていくことなのです。意味が分からない言葉の受け渡しから始まり、人との関係の中で言葉の意味を覚えていくことが本来の姿なのです。また、かかわりあいの中から言葉だけでなく様々なことを学んでいくのです。そのような理由からテレビやビデオのような一方方向の刺激だけでは、言語能力は発達しないとも考えられているのです。
 今回の記事で気付いてほしいことは、テレビが子どもの発達に悪影響をおよぼす可能性を知ってもらいたいのです。今回紹介した内容は絶対的なものではなく、異論を唱える人たちもいます。このような研究が盛んに行われ、様々なことが明らかになってくるでしょう。しかし、子どもたちに害を与える可能性がある場合、それを避けて通 るのが親御さんの役目です。もちろんテレビの良いところも、もう一度確認して下さい。要はテレビの使い方です。うまく使う方法を知っておく必要があるのです。最後に、小児科学会の提言を示します。これからのテレビとの付き合い方の参考にしましょう。

 
提  言(日本小児科学会)
1. 2歳以下の子どもには,テレビ・ビデオを長時間見せないようにしましょう.
  内容や見方によらず,長時間視聴児は言語発達が遅れる危険性が高まります.
2. テレビはつけっぱなしにせず,見たら消しましょう.
3. 乳幼児にテレビ・ビデオを一人で見せないようにしましょう.
  見せるときは親も一緒に歌ったり,子どもの問いかけに応えることが大切です.
4. 授乳中や食事中はテレビをつけないようにしましょう.
5. 乳幼児にもテレビの適切な使い方を身につけさせましょう.
  見おわったら消すこと.ビデオは続けて反復視聴しないこと.



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