かわむら こども クリニック NEWS  平成9年10月号


子どもの病気 うそ ほんと?

 誤解されている子どもの病気、症状、対処法について、今回は下痢や嘔吐について例を挙げて解説していきましょう。
 内容のほとんどは、今までの新聞記事で紹介されています。もう少し詳しく知りたいときには、今までの記事を参考にして下さい。
・下痢が続き食欲がないので心配だ。
 これもよくあることで心配なことはわかります。お母さんたちも下痢をすれば食欲がなくなるはずです。その時は当たり前で仕方ないと考えてしまいますが、子どもの場合は無理にでも食べさせてしまうのです。こう考えてはいかがでしょう。下痢をすれば消化吸収が悪いため食べ物を制限しなければいけません。体が食べてはいけないと信号を出して、食欲をなくしているのです。下痢が続くのに栄養を考えて無理やり食べさせれば、かえってを悪化させる可能性があるのです。そんな時には十分な水分を与えることを心掛けましょう。
・水分を飲ませると下痢便が出るので飲ませない。  確かに、水分だけでなくミルクや食事をとらせると下痢をするということはよく経験します。しかしよく考えてみましょう。飲んですぐに、そのものが下痢として出てくることは稀です。特に水様便の出る下痢では、腸の中に水分が染みだして下痢のもとが貯まっているのです。胃に物が入ると反応で、肛門が開き貯まっていた水様便が出るのです。腸に水分が染みだしているのですから、胃で吸収され易いイオン飲料などで、染み出る以上に与えないと脱水を起こしてしまいます。
・吐いているので、脱水が心配でどんどん飲ませる。
 状況にもよりますが、吐いたときに最も大切なことは胃を休ませるということです。子どもは吐いてすっきりするとまた欲しがり、飲ませると吐くということを繰り返します。飲んだ物だけ吐くだけならいいのですが、胃液も一緒に吐いてしまい次第に吐き気が強くなってしまいます。吐いた後は、出来れば3時間ぐらい何もあげないのが基本です。どうしてもの場合は、少しづつ少しづつ又は氷のようなものを与えて下さい。
・下痢の時には、下痢止めが必要だ。吐くときは吐き気止めが必要だ。
 これは当たり前の気がします。病院に来て下痢があれば下痢止め、吐き気があれば吐き止めをもらうのは当たり前のことかも知れません。しかし必ずしもそうではないことも覚えていて下さい。細菌性の食中毒の場合がその良い例ですが、細菌が体の中に入るのを少なくするために吐くのです。また入ってしまった菌を早く出すために下痢をしているのです。嘔吐も下痢も生体の防御反応と考えられているのです。特にO-157が問題となってから、下痢止めを使うと菌の毒素が排泄できず重症化することが確かめられています。状況によって薬を使う使わないを考ることが必要なのです。
 まだまだたくさんありますが、紙面の都合で今回はこの位にします。誤解はかえって子どもの症状を悪化させたり、お母さんたちに必要以上のストレス、心配を与えてしまいます。病気や対処法についての正しい知識を身に付け、子どもと共にお母さんも楽になる方法を考えてみましょう。

クリニック NEWS コーナーに戻る