かわむら こども クリニック NEWS  平成11年 6月号


こどもの病気 うそ?ほんと?3

 誤解されている子どもの病気と薬について、今回は例を挙げて解説してみましょう。 内容のほとんどは、今までの新聞記事で紹介されています。もう少し詳しく知りたいときには、今までの記事を参考にして下さい。
・早めに風邪薬を飲むと重くならない。
 これはある意味では正解といえますが、必ずしもそうではありません。テレビのコマーシャルでも「早めのカゼに…」等キャッチがあります。しかし注意してみると諸症状の緩和という言葉も出てきます。つまり風邪薬は、風邪を治す薬ではなく、症状を緩和する薬です。つまりインフルエンザにかかれば誰でもインフルエンザの経過を取るもので、薬を飲んだからといって治りが早くなるものではありません。服薬によって症状が緩和するので、病気が軽くなったような気がするのです。また昔から注射をすると治るということを聞きますが、これも同じで症状を楽にする程度と考えておいたほうがいいでしょう。
・風邪をひいたので、抗生物質が欲しい。
 ちょっと強烈ですが、抗生物質は風邪には効きません。抗生物質は、単に細菌を殺すだけの薬で、ウイルスによって起こる風邪には効果はないのです。しかし風邪でも使うこともあるのです。熱がある場合でウイルスと細菌との区別がつかない場合には、抗生物質を使います。直接鼻水や咳を止める作用がないこともを覚えておいて下さい。抗生物質使うと下痢を起こしたり、長期間にわたって安易に使い続けると薬が効きにくい菌(耐性菌)を増やしたりすることも問題となっています。
・前回の風邪薬が効いたので、同じ薬が欲しい。
 この気持ちも良くわかります。しかし風邪薬(抗生物質も含め)は、同じように見えても内容が違うことがあります。また風邪の種類や時期によっても、薬の効果は変わってきます。治る時期に使った薬は、効果があるように見えるものです。病気の経過や症状によって、使う薬が違うことを知っておく必要があります。医師はその時の症状などを判断して、最適な薬を処方しているのです。
・早く治したいので、強い薬が欲しい。
子どもを楽にしてあげたいとか保育園に預けて働いたりしていると、早く治したいと考えるのが親心です。しかしよく考えてください。例えば弱い薬を使って、治すことを遅くするということは、あるのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。咳がひどければ咳止めを強くするとか、鼻水が止まらなければ薬の量を多少多めに投与するとか、工夫しています。軽い咳に強めの薬を使ったからといって、病気が早く治るものではありません。強い薬というのが正しいかどうかはわかりませんが、劇薬に指定されている喘息の薬などもあります。しかし喘息の薬は普通の風邪には、適応が無い(投与しない)ものです。つまり薬というのは強い弱いと考えることより、病気や症状に合わせた薬が必要だということを知っておいてください。
・風邪薬を飲むと下痢をする。
 確かに抗生剤を飲むと下痢をする子どもがいます。これは抗生物質によって腸内細菌が変化を起こすためと考えられています。しかしウイルス性胃腸炎(吐いたり下痢したりする風邪)や突発性発疹でも下痢が見られます。実際には抗生物質の影響よりも、ウイルスによる腸炎の方が多いのです。抗生物質による下痢を心配するあまり、十分な治療ができないことは子どもにとってはデメリットです。
 まだまだたくさんありますが、紙面の都合で今回はこの位にします。誤解はかえって子どもの症状を悪化させたり、お母さんたちに必要以上のストレス、心配を与えてしまいます。病気や対処法についての正しい知識を身に付け、子どもと共にお母さんも楽になる方法を考えてみましょう。
 (平成11年度第1回『お母さんクラブ』の内容の一部です。)
クリニック NEWS コーナーに戻る