かわむら こども クリニック NEWS  平成13年5月号


夜間診療

 今回は夜間診療しなくなった理由についてのメールを頂きました。この件については他のお母さん達にも、様々な思いがあるかもしれません。返信したメールを中心にして、記事にしてみました。
 夜間診療をしなくなった理由、いくつかあります。まず第一の理由は忙しくなってしまったことです。小児科医会や保険医協会の理事や医師会の委員などの役職があり、平均すると週に2〜3回は会議や勉強会のために留守をしています。また御承知のようにインターネットの医療相談の数も増え毎月数十時間を費やさなければなりません。医療相談は平均で月100通をこえ、2月にはなんと180通にもなりました。また院内報の発行、お母さんクラブの準備などで、自分の時間がほとんどないのが現実です。この連休中も学会の準備のため、毎日院長室で缶詰め状態です。また日中の診療も忙しく、毎日大変な思いをしていることは御承知の通りです。小生も今年50歳です。体力的にも少しづつ落ちて来ています。しかし日中100人以上(多い時には200人以上)の患者さんを捌き、夜は夜で嫌々ながら会議や医療相談で自分の時間を奪われ家内との会話も少なくなり、テレビを見る時間もなく、唯一の安らぎが昼休みの午睡。このままの忙しさの中で年をとっていく、そんな不安が頭をかすめることもあるのです。
 となれば、そんなこと止めて患者さんを診るのが正しいと思う方もいるでしょう。しかし育児支援には様々な方法があり、また責任上続けなければならないことも事実です。仙台は無医村ではなく、夜間の診療所もあれば休日でも小児科を診てくれるところもあります。もちろん小生も、北部診療所や在宅休日当番を担当しています。当番を小児科医全体で負担することによって、他の先生達が休めるようなシステムが運用されているのです。
 親御さんが期待する気持ちもわかりますが、医師も人間です。夜間休日と言うことになれば、一年中休みなく働けと言うことになるかも知れません。翌日の診療のことも考えなければならないし、仕事も貯まってしまいます。国分町で飲み歩くこともなく、お正月の御盆以外には休みがとれません。先日骨折して入院したのですが、患者さんのことが心配で早めに退院して来ました。それが悪かったのか何回も吐きながら診療していましたが、我慢が出来ず午後休診としてしまいました。病気なのに働く、こんな気持ちはわからないかも知れません。しかし心配の投書やメール、そしてお見舞いまでいただきました。その中には「いつも忙しいので、この際骨休みして下さい」と言うものもありました。そんなお母さん達に理解されて支えられていると、安心しました。
 以前は夜間もできる限り診療していました。時々急病診療所は遠いから、待ち時間が長いからと言う理由だけで受診することもありました。言いたくはありませんが、自院での夜間診療で様々な嫌な思いを経験しています。現在は夜間や休日に心配な患者さんには、名刺に書いた簡単な紹介状を持たせています。休日の場合は遠くても小児科の医師にかかるように、説明しています。また患者さんの専用のメールアドレスを準備して、患者さんの質問にも答えるようにしています。これはほとんど毎晩、目を通しています。
 夜間や休日の診療をしなくなったと言うことは、止むを得ずと言うことなのです。この問題を解決するのは、夜間も休日もを診てくれる先生を探すしかないでしょう。昔と違って夜間も休日も診てくれる先生は珍しくなって来ました。そして探し当てたなら遠くとも、信頼して通うことが大切でしょう。「夜間診療しない」のは医師のわがままでしょう。しかし「医師は夜間診療をしなければならない」と言うのも患者さんのわがままなのかも知れません。この基本は価値観の違いなのです。小生は一人のお母さんのためではなく、なるべく多くのお母さん達のために働いているつもりです。
 仙台は夜間診療所が2ケ所もあります。また休日はその2ケ所に加えて、小児科医の在宅当番もあるのです。確かに夜間診療所に対する不満が多いことも承知しています。あくまでも一時的な利用なのです。上手に利用する方法を考えてみてください。
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