■2005.2-3月号 vol.18 子どもの事故(窒息を中心に)

  今回から少し子どもの事故について考えてみましょう。インフルエンザが流行したり、やれ麻疹・水痘と病気のことばかりが心配になります。しかし0歳児の先天奇形等を除くと、死因の第1位は不慮の事故となっていることをご存知ですか。現在の日本では子ども全体の死亡率は低く、先進各国の中でもトップクラスの状況です。しかし事故に目をむけると、年齢が低くなるのに伴い、各国と比べて高率になっています。0〜4才の事故による死亡を、最も低いスウェーデン並にすれば毎年800人もの子どもの命が救えると言われています。そうした問題点から厚生省に研究班が設けられ、次第に事故防止の効果が上がってきているところです。

 従来事故は偶然の出来事で、予防することができないと考えられていました。しかし事故の研究が進むにつれて、子どもの行動や発達を理解することによって、予防可能なことがわかってきました。子どもの事故の種類は多く、また年齢によっても原因が変わってきます。

 乳児期では機械的窒息が多くを占め、以後年齢が長ずるに従い交通事故や溺死の割合が増えてきます。2001年死因別死亡数では、0歳児での不慮の事故の死因の第1位は機械的窒息で70.8%を占め、以下交通事故(11.8%)、転落等(6.1%)、溺死(5.2%)の順となっています。機械的窒息の原因には、鼻口部の圧迫・気道異物などがあり、鼻口部の圧迫は最も多いもので、柔らかな布団にうつぶせで寝ることが問題となります。またうつぶせ寝は、乳児突然死症候群との関係も指摘されているため、原則として避けるほうが懸命でしょう。他にも添い寝による事故もあり、赤ちゃんが小さいうちは同じ布団で寝ることは避け、あくまでも眠るまでの手段として考えてあげて下さい。次に多いのが気道異物です。乳児期前半では哺乳と共に空気を飲み込むことと、食道と胃のつながりが緩いために、嘔吐しやすくなります。吐物の誤嚥を防ぐには、哺乳後に十分ゲップを出させ、しばらくは目を離さないことが重要です。止むを得ず目を離す場合には、タオルなどで上体を起こして短時間にするように心掛けましょう。

 1〜4歳では、第1位が交通事故の37.5%で、溺死は26%、窒息は13.6%となっています。窒息は減少してきますが、ビー玉やお金などの異物よる窒息の割合が高くなります。大きさ(直径)が問題となり3cm以下のものが危険とされ、防止のためには身の回りや手の届く所に危険な物を置かないことが大切です。窒息とは直接関係はありませんが、ピーナッツなどの誤嚥による肺炎が問題となるため、3才以下では与えないようにしたいものです。

 5〜9歳では、交通事故の割合が56.5%と最も多く、以下溺死(22.6%)、火災など(9.7%)となっています。窒息は多くはありませんが、食事中の誤嚥の割合が多くなってきます。コンニャクゼリーが原因のこともありました。予防のためには躾けが大切になってきます。歩きながらの食事や食べ物を口に入れたままの会話を止めさせ、良く噛む習慣などをつけることも必要です。それ以外にも窒息の原因は身の回りにはたくさんあります。ビニール袋やひもで遊ぶことも危険の一つです。そんなことにも気を配りたいものです。

 このように年齢によって原因が変わることの理由は、発達の過程と行動範囲の広さの違いによるものです。ですから、子どもの発達や行動範囲に応じた対策をたて、大人たちが十分目を光らせていれば、多くの事故は予防できるということになるわけです。見逃しがちですが、躾けも大切な予防法の一つです。子どもの危険に対する判断は不十分です。状況に応じては、危険を覚えさせるためしっかり叱ることも大切です。親の責任と義務を考え予防することを心掛けましょう。



2005.5月号 vol.20 紫外線は怖い
2005.4月号 vol.19 子どもの事故(交通事故を中心に)
2005.2-3月号 vol.18 子どもの事故(窒息を中心に)
2005.1月号 vol.17 冬の風邪について

2004.12月号 vol.16 アトピー性皮膚炎 その二
2004.11月号 vol.15 アトピー性皮膚炎 その一
2004.9-10月号 vol.14 じんましんについて
2004.8月号 vol.13 扁桃腺炎について/扁桃肥大について
2004.7月号 vol.12 流行性耳下腺炎について/溶連菌感染症について
2004.6月号 vol.11 風疹について/水痘について
2004.5月号 vol.10 薬について
2004.4月号 vol.9 ひきつけについて
2004.2-3月号 vol.8 喘息について
2004.1月号 vol.7 咳について

2003.12月号 vol.6 インフルエンザを考える
2003.11月号 vol.5 発熱について/解熱剤について
2003.9-10月号 vol.4 麻疹(はしか)について
2003.8月号 vol.3 熱中症について
2003.7月号 vol.2 夏カゼ/夏に多い皮膚の病気
2003.6月号 vol.1 食中毒・0-157